精密デッサンを描く時の「バランス」について

 精密デッサンをマスターするのに役立つのが、こちらの本です。

●松本英一郎、深澤純子著 『デザイナーのための精密デッサン』
(アトリエ技法シリーズ増刊E10、 アトリエ出版社、1984年発行)

 精密デッサンとは、よりリアルに、そして、より描きこまれたデッサンのことです。

 デッサンでは、基礎が大事ですが、もちろん、それだけではいけません。

 あるレベルまでしっかりと描きこみ、質感を出し、描写しきってこそ、上級のデッサン、合格できるデッサンとなるのです。

 デッサンの技法書というと、基礎の部分を徹底的に教えるか、もしくは、芸術性のあるデッサン技術を教えるか、この二択になっているように思います。

 しかし、『デザイナーのための精密デッサン』では、そのどちらにも、かたよることなく、デザインを勉強する人向けの精密デッサンについて、解説しています。

 そのため、必要なポイントを、非常にうまく解説していて、スムーズに理解することができます。

 実は、デザインを学ぶ時のデッサンというのは、この必要なポイントを理解する、ということが、とても重要です。

 なぜなら、多くの人が、デッサンにのめりこみすぎて、デザインの勉強のバランスを崩してしまうからです。

 別の言い方をすると、デッサンを上手くなろうとするあまり、多くの時間をかけ、必要以上のテクニックを、追い求めてしまっているのです。

 ただ、誤解されるといけないので、慌てて付け加えますと、私は別に、デッサンを上手くなることを、否定しているわけではありません。

 上手くなろうとして、必要以上にデッサン習得に時間をかけ、100点以上のデッサンを追い求める人が多いので、警告をしているだけなのです。

 デザインを学ぶ際、必要なのは、デッサンだけではありません。

 色彩だったり、レイアウトだったり、タイポグラフィだったり、と、さまざまなことを学ぶ必要があります。

 今では、図形や写真加工のアプリケーションの学習も加わることでしょう。

 それらをまんべんなく学び、そして、それぞれを、ある程度、マスターしていく。

 デザインの場合は、どれか一つの技術や能力が、飛び抜けて優れている、というよりも、いくつもの要素を、バランスよく身につける必要があるのです。

 だからこそ、必要以上にデッサンに時間をかけることなく、どうしても外すことのできない技術を、学んでいけばいいのです。

 そうすることで、デザインを学ぶ時に必要なデッサン力というのは、身につけることができるのです。

 かといって、基礎的なデッサン技術だけあればいい、というわけではありません。

 簡単な構成のデッサンや、比較的、描きやすいモチーフのデッサンなどばかりでは、あまり評価されません。

 せいぜい、普通の人よりは絵がうまいね、とか、まじめにデッサンを勉強したんだな、と思われるぐらいです。

 そこは、最低限、人の目を引き、じっくりと眺めてくれるようなデッサンを描くことが必要です。

 そのための重要なテクニックの一つが、精密デッサンなのです。

 基礎をしっかりと学び、その上で、応用テクニックとして、精密デッサンを身につける。

 そうすることで、ようやく、デッサンの学習から卒業することができるでしょう。

 それだけ、精密デッサンというのは、デッサン学習における集大成であり、最強のテクニックなのです。

 ぜひとも、及第点のとれるデッサンを描きたい、という人がいれば、とにかく精密デッサンをマスターしてください。

●松本英一郎、深澤純子著 『デザイナーのための精密デッサン』
(アトリエ技法シリーズ増刊E10、 アトリエ出版社、1984年発行)