私の広告デザインとの関係を振り返ってみて、反省することの一つは、広告デザインの特長を、最初、理解できていなかったことだと思います。
広告デザインも、広い意味で考えれば、グラフィック・デザインの一つです。
そのため、他のグラフィック・デザインの分野の思考法や、方法論で考えてしまいがちです。
例えば、基礎デザインや編集デザインの手法を使って、広告デザインに取り組みがちなんですね。
確かに、広告デザインも、グラフィック・デザインの一つなので、そのアプローチ方法も、間違いではありません。
しかし、それだけでは不十分である、ということが、何年か、広告デザインを作っていて、感じました。
例えば、編集デザインだと、いかに読みやすくレイアウトして、見た人に、美しいと思ってもらえるか、というのが、一つのゴールだと思います。
この考え方は、広告デザインを作る際でも、必要です。
広告を見た人に、いかに良い印象を持ってもらうか。
それが、広告を作るデザイナーの一つの目標であり、ゴールでもあると思います。
しかし、広告の場合は、それだけでは、不十分なのです。
何と言っても、広告は、そこで宣伝する商品やサービスを購入してもらわらければなりません。
つまり、いくら美しい広告を作っても、それが、売り上げに結びつかない場合は、広告としては、成功とは言えないのではないか、と私は思います。
確かに、大企業などが、大々的に宣伝し、商品やサービスの周知が目的、という広告もあります。
また、企業のブランドイメージを高めるための広告戦略、というものもあります。
しかし、それは、広告の中でも、ごくごく限られたものです。
私が制作してきた広告は、結果を求められるものであり、そのため、広告主さんは、お金を払って、広告制作を依頼してきました。
そのため、私は、結果の出る広告デザインの重要性というものを、常に感じてきました。
ただ、私の記憶を振り返って考えてみても、そういった広告の重要性や機能について、広告制作を始めるまでは、あまり気が付くことはなかったと思います。
やはり、美しい広告の方が、大規模に行われるので、多くの人の目につきやすいのです。
そのため、良い広告=美しい広告というイメージが、できるのではないでしょうか。
もう一度、確認のために書きますが、私は、何も、美しい広告やイメージ広告と言われるものを、否定するわけではありません。
それも、りっぱな広告ですし、必要だと思います。
しかし、広告は、それだけではなく、他にも素晴らしい広告はいくつもありますし、判断する基準も、いくつもある、ということです。
なぜ、こういう事を言うかというと、最初に述べましたとおり、私が、若い頃、良い広告=美しい広告、というふうに、思い違いをしていたからです。
そのため、広告の効果や売り上げ、というものを、軽視していたんですね。
その結果として、たいへんな苦労をすることになりました。
そういった経験を、他の方には、少しでも減らしてほしい、と思っているため、今回、私の体験をとおして、書いてみました。
結局、広告について、自分で勉強し直すことで、広告デザインについての見方が変わり、肯定的な考えを持つことができました。
広告デザインについて、悩んだり、行き詰まったりしている方は、ぜひ、広告について、より学んでほしいと思います。
そうすることで、広告の役割や重要性が見えてくることでしょう。
広告デザインの場合、デザインの役割は、最低限、クリアするものであり、デザイン要素だけで、成立するものではありません。
それに気付くと、新しい世界が見えてくると思います。
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