デッサンの基本的な描き方について、いろいろ説明してきましたが、あることについて、まだ、語っていないことに気が付きました。
それは、デッサンが、どのように評価され、採点されるか、という点についてです。
デッサンの描き方、つまり、道の歩き方については話してきたのですが、どこにたどり着けばいいか、つまり、ゴールについては、語っていませんでした。
ただ、デッサンは、芸術の一つと考え、そもそも、評価や採点、といったものが成立するのか、という考え方もあります。
確かに、芸術作品を評価するのは、難しいかもしれません。
しかし、私がこれまで説明してきたのは、デザインを学ぶために必要なデッサンです。
つまり、デッサンそのものの評価というよりも、デザインを学ぶための基礎として、デッサンが、どれくらい描けるか、ということです。
もっと現実的な言い方をすれば、デザインを学ぶ美大や芸大、それに類する学校に入学するためのデッサンです。
つまり、試験の受かるためのデッサン、と言い換えてもいいでしょう。
また、デザインの学校に入学できたとしても、授業の課題で、デッサンが出されたりします。
そういった授業や課題で、合格点をとるためのデッサン、ということです。
まとめていうと、評価されるのを前提として、では、どうやったら合格点や及第点をとれるデッサンを描くことができるか、ということです。
評価や採点されるのが前提なら、それが、どのようなもので、どういう判断基準にもとづいているのか、といったことを、知っておいた方がいいでしょう。
そうすれば、それに向けて、というか、それにそって、デッサンを勉強し、完成させればいいわけです。
あえて、もう一度言っておきますが、芸術としてのデッサンは、ここでは、とりあえず、置いておく、ということです。
実は、良いデッサン、悪いデッサンの明確な基準はありません。
これが、学校で習う他の教科と大きく違うところです。
○×という、はっきりとした正解不正解はありません。
数学や英語などだったら、正解か、間違っているか、のどちらかです。
しかし、デッサンの場合、そういった基準というか、明確に正解不正解を決めるものはないのです。
では、デッサンの試験などでは、どのように評価しているかというと、試験官の感覚です。
試験官が、デッサンを見て、これはいい、これはいま一つ、これはダメ、という感じで判断していきます。
個人の判断で善し悪しが決まるので、多くの場合は、複数の試験官で、それぞれ判断していきます。
そして、微妙なデッサンは、話し合って、合格か、もしくは及第点か、決めていくんですね。
実は、私も、少ない経験ですが、デッサンを評価する立場になったことがあります。
それは、デッサンの授業のお手伝いをしていた時です。
デッサンの授業で、生徒さんが描いた何十枚ものデッサンを、ひとつづつ見て、良し悪しを判断していくのです。
この時は、数が多かったこともあるのですが、一枚のデッサンを判断するのに、それほど時間はかけませんでした。
私も、デッサンを描く大変さは知っていたので、じっくりと見て、考えて、判断しようと思っていました。
しかし、実際にデッサンを評価しようとすると、わりと、短時間でわかるものです。
作品によっては、一目見ただけで、わかるものです。
また、デッサンの評価の場合、良いデッサンよりも、悪いデッサンの方が、よくわかります。
それは、なぜなのかよくわかりませんが、もしかしたら、ある程度、デッサンをやっている人間は、一定の美意識というか、良いデッサンに対しての判断基準というものを持っているからかもしれません。
だから、描写があらかったり、構図がおかしかったりすると、すぐに違和感を感じて、「ん?」と気が付くわけです。
そして、基礎的なデッサンを評価する場合、それほど高度なテクニックや、ずば抜けた完成度を、求めているわけではありません。
基本的な技術を使うことができ、それが、バランスよく、画面の中で展開されていれば、十分、合格点はとれるのです。
そのため、デッサンを学ぶ場合は、やはり、基礎的なテクニックを、しっかりと身につけた方がいいですね。
ただ、ちょっとレベルの高い美大や芸大などでは、高度なテクニックを要求する場合があります。
そういうところを目指している人は、しっかりと過去の合格作品を見ておきましょう。
そうすることで、どれくらいの完成度を求められているのか、合格ラインのデッサンとはどういうものか、といったことが、わかると思います。
そういった高い所を目指すとしても、まずは、じっくりと基礎的なデッサンを学びましょう。
家を建てる時と同じで、基礎がしっかりしていると、その上に高い建物や、立派な家を作ることができます。
デッサンも、基礎をしっかり身につけることで、合格点に届く作品を描くことができるのです。
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