デッサンを、あえて文章のみで解説した理由

 私が、今までの研究と実践をふまえて、デッサンにおけるポイントをまとめたのが、『デザインのためのデッサン講座』です。

⇒『デザインのためのデッサン講座(考え方・初級編)』

 今回の講座レポートの特長の一つは、文章だけで、デッサンを解説していることです。

 多くのデッサン技法書、いや、ほとんどのデッサン本では、図や写真を多用して、デッサンを説明しています。

 これは、当然といえば当然で、デッサンは、描くものですから、ビジュアル的なものです。

 そのため、文章での説明だけでなく、図を使用しての解説や、実際のデッサン作品を使って、細かく説明しています。

 また、良いデッサン本では、実際にデッサンを描いていく過程を、連続写真で、説明していたりします。

 これは、どのような順番でデッサンを描いていけばいいかがわかるため、非常に参考になります。

 このように通常であれば、デッサンのコツや、描き方を説明するのであれば、図や写真を使って解説するのが、普通のやり方です。

 しかし、今回、私は、あえて文章のみでデッサンを解説してみました。

 それには、いくつかの狙いがあったからです。

 一つは、理論的というか、理屈を説明することを、第一にしたかったからです。

 確かに、具体的でわかりやすく説明するには、図や写真を使った方が、便利です。

 しかし、同時に、ポイントがあいまいになり、こちらが伝えたいことが、うまく伝わらない場合が多いのです。

 図や写真などのビジュアルは、一瞬で目に飛び込んできます。

 そのため、見ただけ、眺めただけで、全てがわかります。

 そうすると、なんだか、わかった気分になってしまうのです。

 図や写真で解説されていることをじっくりと考え、自分のこととしてとらえることが、できないまま、どんどんと先へ進んでしまうのです。

 単純に情報や知識を吸収する分野でしたら、これでも構いません。

 しかし、デッサンは、自分で考え、実際に手を動かし、あるレベルまで描けるようにならないと意味がありません。

 そのため、理論や理屈をしっかりと理解して、自分の頭と心に落とし込む作業が必要です。

 そのためには、ビジュアル的なものよりも、文章の方が良いと判断しました。

 だからこそ、今回の講座レポートでは、文章を使って、デッサンのポイントを説明してみたのです。

 また、デザインやデッサンを学ぼうとする人は、ビジュアル的なセンスが高い、ということもあります。

 そういう感性が優れているからこそ、デザインに興味を持ち、デッサンを学んでみようという気持ちになったのでしょう。

 これは、多くの場合は、長所ですが、一方で、短所となる場合もあります。

 ビジュアル的な感性が高いために、ついつい、見たものを、感覚的に把握し、理解してしまうのです。

 このような感覚は、デザイナーには、必要不可欠ですが、理論や理屈などを理解する場合には、弱点になる場合もあります。

 やはり、理論的で、順序立てて理解する必要がある理屈などは、感性だけでは、十分に学べないのです。

 それには、文章という、ある意味、抽象的な考えを使って、理解していくという工程が必要なのです。

 デッサンは、感性だけでは、なかなか上達しません。

 もちろん、飛び抜けた感性やセンスを持った人であれば、見ただけで、デッサンの表現方法を理解して、素晴らしい作品を仕上げるでしょう。

 ただ、多くの人、いや、ほとんどの人は、そうではありません。

 そもそも、そういう優れた人は、私の文章を読んでいないでしょう。

 また、私も、なかなかデッサンが上達せず、悩んでいる人の役に立ちたいと思って、今回の文章を書いていますし、講座レポートを、がんばって作ってみました。

 デッサンが上手くなるには、遠回りに見えるかもしれませんが、文章による理論や理屈の理解が必要なのです。

 ちょっとしたコツや、デッサンを描くための簡単な考え方を知ることで、それがきっかけになり、どんどんと上達していく、ということがあります。

 特に、今まで、がんばってデッサンを練習してきた人は、描き方の基礎的な技術は、十分に身につけていると思います。

 あとは、ほんのちょっとしたきっかけがあれば、デッサンを上手に描くことができるようになるでしょう。

 そのお手伝いができればと思い、今回、『デザインのためのデッサン講座』を作ってみました。

⇒『デザインのためのデッサン講座(考え方・初級編)』