アナログな、手作業の技法や考え方を紹介していると、いろいろと、考えることがあります。
現在では、デザイン、特にグラフィック・デザインの主要な舞台は、デジタルに移った、と言っていいでしょう。
グラフィック・デザイナーの活躍の場は、主にWebになりました。
なんといっても、そこが一番、人もお金も集まりますから、当然といえば当然です。
やはり、21世紀になって、それが本格的になったと感じています。
私も、ネット上で、古書店を運営していますし、こうして、ネットを通じて、語りかけています。
昔なら、考えられなかったことで、嫌味なしに、良い時代になったなぁ、と思います。
だからこそ、こういう時代にあって、デザイン古書を紹介しているネット古書店の意味を考えるわけです。
はたして、本当に、お役にたっているのか?
そもそもの存在理由、存在意義は、なんだろうか、と。
時々、デジタルやネットの技術のすごさに、圧倒されることがあります。
もはや、まっすぐに、キレイな線を引くことや、ムラなく、均等に色を塗る、なんていう手作業の技術は、まず、必要とされていません。
それこそ、今日、ドローイング・ソフトを使い始めた学生が、クリック一つで、実現できてしまいますから。
その昔、T定規や三角定規を使って、ロットリングで線を引く練習をしていたことが思い出されます。
私は、とにかく、線を引く時に、ケント紙を汚してしまうので、よく先生に怒られました。
また、色彩構成で、ポスターカラーを上手に塗ることができず、苦労しました。
そういえば、先輩が、気に入った色を、いくつも、ボトルに入れて、保存していたことを思い出します。
昔は、道具がたくさん必要だったので、重い荷物を背負い、実技の授業に出るため、大学の坂を登っていました。
今なら、そういうこともないんでしょうね。
つまり、デジタル全盛の時代にあって、アナログなデザイン技法が、どれくらい、役立つことができるのか、ということです。
ただ、私は、アナログというか、昔のデザイン手法が好きですし、それを活用できる媒体が好きなんですね。
今では、全てが、Web中心ですから、例えば、昔は、有効で影響力の大きかった、紙に印刷された雑誌なども、それほど、読まれる機会は、少なくなりました。
それでも、私は、まだまだ紙の雑誌を読むことが好きですし、そちらの方が、便利だなぁ、と思っています。
スマホだと、画面が小さいですし、パソコンだと、どうも、手軽さ、という点から考えると、不自由な感じがします。
この前も、テレビ番組の雑誌を読んでいたのですが(テレビ番組、という時点で、やや古い感じがしますでしょうか)、見開きのサイズが、視界に収まる、ちょうどいい広さのように感じますし、ペラペラと、薄いけれど、存在感のあるページをめくっていくのは、なんとも心地よいのです。
だからこそ、これからも、紙媒体の雑誌や本を、読んでいきたいな、と思っています。
そして、アナログなデザインとも、触れ合っていければ、と思います。
そういう体験の中で、やっぱり、心配になるのは、アナログなデザインの先細りです。
やはり、人もお金も、デジタルやWebに集まっています。
それも、当然でしょうね。
まさか、今、手作業中心の、アナログなデザインだけを手掛けるデザイナーでは、正直、食っていけないでしょう。
だから、人がデジタルに集まり、その結果、アナログは過疎化する。
そして、さらに、デジタルに人が流れる――
そういう、大きな流れになっているような気がします。
だからこそ、その流れを少しでも食い止める、逆行する力になれば、という思いで、ネット古書店を運営しているのかもしれません。
そして、もちろん、アナログのデザインの応援という意味もあるのですが、それが、デジタルのデザインの向上にも、つながると思うのです。
私は、アナログとデジタル、双方が影響しあって、デザインの質が向上していければ、とも思っています。
大きな視点で見れば、そもそも、デザインに、アナログもデジタルも、ないですしね。
と、このように、たまに、大きな考えを、思いめぐらしたりしています。
まあ、本当のところは、昔、あこがれたデザインが好きで、それらについて語られた本も、大好きだ、ということなんですが。
だから、大好きなものを、みなさんに紹介したい、という、純粋で、素朴な気持ちがあるんですね。
それでだけでも、ネット古書店を運営するには、十分な理由かもしれません。
コメント