本や雑誌のデザインをする編集デザインでは、文字が重要な要素となります。
文字というより、タイポグラフィや、フォント(書体)といった方が、わかりやすいかもしれません。
どのような種類の文字を選び、それを、どのようにレイアウトするかは、エディトリアル・デザインにとっては、とても大切です。
よく、タイポグラフィの知識や技術を学ぶ時に、欧米の技法が参考にされます。
例えば、バウハウスの手法などが、有名でしょうか。
ただ、欧米のタイポグラフィの技術は、欧米の言語がもとになっています。
そのため、日本語に直接、取り入れる、というのは、ちょっと無理があります。
ひらがなやカタカナ、そして、漢字を使う日本語では、独特の技術が必要になるわけです。
私が、編集デザインにおいて、影響を受けたのが、雑誌『デザインの現場』1997年6月号(vol.14 no.89)の特集「文字とレイアウト」です。
この特集の中に「文字で伝えるということ 朗文堂・片塩二朗さんの話」という記事があります。
ここで、欧文書体の特長の説明があり、そして、タイポグラフィの大切さが、解説されています。
これらを読んでいると、本当にタイポグラフィというのは、奥深いものだと実感します。
ただ、このタイポグラフィの大切さや奥深さ、そして、おもしろさが、今は、なかなか伝わりにくい時代なのかな、とも感じています。
先の特集の中で語られているのは、ほぼ、印刷の中でのタイポグラフィです。
現在では、印刷と関係する紙媒体のグラフィック・デザイナーよりも、デジタルやWeb関係のデザイナーの方が、多いと思います。
そういう時代にあって、印刷全盛の時代に形作られた文字のデザイン、つまり、タイポグラフィに対して、どれぐらい関心を持ってもらえるのか、ちょっと不安です。
なんといっても、現代は、紙に印刷された情報よりも、スマホやタブレットの情報を見る時間の方が、はるかに多い事でしょう。
そういう時代にあって、はたして、タイポグラフィの重要性を、どれくらいの人が感じてくれるでしょうか。
確かに、印刷とデジタルでは、そもそも、表現というか、映し出す技術自体が違うので、簡単な比較や、技法の継承というのは、難しいかもしれません。
しかし、私は、印刷で培われたタイポグラフィの考え方や手法は、デジタルでも、かなり有効に、使うことができると思っています。
それについては、語りだすと長いので、また、改めて、ご説明しようと思います。
ただ、私が、ぜひ、オススメしたいのは、美しい文字に出会ってほしい、ということです。
ただ単に、中身の情報だけを伝えるために、文字を並べただけのものは、やはり、なんとなく、味気ないものです。
その点、タイポグラフィについて考え抜かれてデザインされた本や雑誌は、とても、美しいと思います。
文字自体にも、美しさがあり、その文字の組み方、そして、レイアウトの仕方によって、さらに、素晴らしいものになるという感動を、ぜひ、味わってほしいのです。
その美しさや感動は、印刷やデジタルなどの媒体をこえて、不変のものなのです。
そのような体験をすることで、タイポグラフィに対する認識は、大きく変わると思います。
そして、そのような文字の美しさに出会うには、やはり、過去の素晴らしい印刷物を見ることが最適です。
だからこそ、私は、昔のデザイン関係の本を、ご紹介しているのです。
そして、その感動は、間違いなく、Webデザインなどのデジタルのデザインにも、活かすことができます。
それができるのが、グラフィック・デザイナーの仕事なのです。
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