毎年、夏の暑い時期になると、思い出すことがあります。
あれは、確か、高校二年生の夏だったと思います。
夏休み中に、デッサンの練習をしようと、高校の美術室に行きました。
私は、美術部に所蔵していて、顧問の先生の許可もいただいていたので、美術室の鍵を借りることができました。
夏休みということもあり、美術部は、誰も出てきていませんでした。
たまに、美大受験の先輩や、熱心な部員が出てきていることもあったのですが、その日は、たまたま私一人でした。
広い美術室に、私一人だけでした。
一人だけと思うと、なんだかうれしい気持ちになったのですが、夏の盛りということもあり、美術室の中は、かなり暑くなっていました。
今は、どうか知りませんが、当時は、クーラーなどは、設置されていませんでした。
また、美術室は、最上階のかど部屋にあり、夏の強い日差しが、カンカンと照りつけます。
お昼頃になると、窓を全部あけていても、とても暑かったのをおぼえています。
今から思うと、それだけ高温になるからこそ、夏休みに部活の出てくる人がいなかったのかもしれません。
私も、暑さに、めげそうになりましたが、せっかく出てきたこともあり、デッサンの練習をすることにしました。
暑いことは、事前にある程度、予想していたので、さっそく、半袖半ズボンの体操服に着替えます。
そして、バケツに水をはり、そこに、足をつっこんで、デッサンをはじめました。
普段であれば、そういう格好でデッサンはしないのですが、なんといっても、私一人ですから、ある程度のかっこう悪さは、気になりませんでした。
しばらくデッサンをしていると、グラウンドからは、運動部の部活動の声が聞こえてきます。
こんな炎天下の中で、大変だなぁと思いつつ、私もがんばろうと、デッサンにはげみました。
なぜ、この長いエピソードをお話ししたかというと、そこから、ぜひ、お伝えしたいメッセージがあるからです。
一見すると、暑い中でも、根性と情熱をもって、デッサンに取り組みましょう、と受け取られるかもしれません。
それはそうなのですが、私は、もう一歩、踏み込んで、お話ししたいのです。
では、なぜ、クーラーもない、夏の暑い美術室で、デッサンの勉強をすることができたのか、ということです。
私も、その当時は深く考えなかったのですが、振り返ってみると、長い人生で、あんなに真剣に、夢中になって、何かにはげんだこと、というのは、そうそうないわけです。
それは、根性や情熱があったからだ、と、かたづけてしまえば簡単なのですが、では、その根性や情熱はどこから来たのか?
また、それらを生み出すには、どうすればいいのか?
そういう点を少し考えてみました。
ようは、ちょうど、その当時、デッサンのおもしろさを、わかってきたからだと思います。
つまり、やればやるほど、だんだんと上達していることが実感できて、さらに、練習しようという気持ちになっていました。
だからこそ、汗をダラダラと流しながらも、暑い美術室で、こまかいデッサンをすることができたと思うのです。
今から考えると、熱中症になっても、おかしくないくらいですからね。
だから、今では、こういう方法は、お薦めしません。
しっかりと、クーラーを活用して、快適な環境でデッサンをしましょう。
当たり前の話ですが、その方が、もちろん、デッサンがはかどりますし、間違いなく、上達のスピードも早いでしょう。
つまり、こういうふうに、熱心にデッサンに取り組みには、どうしたらいいか、というお話です。
では、もう一歩踏み込んで、どうしたら、デッサンをおもしろく、楽しく感じられるようになるか、ということです。
この境地にまで達すると、なにより、楽しいですから、積極的にデッサンをするようになります。
そうなると、練習時間が増えますから、自然と技術が上達していくわけです。
そのためには、コツコツ、あきらめずに練習していくこと。
もう一つは、的確なテクニックを知ること、です。
当たり前の話ですが、初心者の段階で、自分の頭の中だけで考えて、ただ、なんとなく手を動かしていても、デッサンは、うまくならないでしょう。
そういった大切なポイントを押さえることで、情熱がわき、デッサンが上達していくわけです。
その結果、デッサンをすることが、おもしろくなり、さらに、デッサンの勉強に、集中するようになる。
この段階に入れば、どんどんとデッサンは、上達するわけです。
夏の暑い日差しは、あの当時の情熱を、思い出させてくれます。
ぜひ、そのような思いでもって、デッサンに取り組んでくれることを願います。
その結果、デッサン力は、確実に、向上していくことでしょう。
コメント