若い頃、なぜ、デッサンを学ばないといけないのか、よくわかりませんでした。
デッサン力を身につけるには、けっこう、地味な練習が必要です。
それを、繰り返し、コツコツと続けていく必要があります。
正直、根性のない自分には、苦手なことでした。
でも、デザイナーになるために、そして、芸大受験には必要だと思い、学んでいました。
ある意味、英語や数学などの受験のための勉強と、同じように考えていたかもしれません。
しかし、このような消極的で、受け身な態度ですから、なかなかやる気もわいてきません。
当然、そういうモチベーションでは、上達は、難しいわけです。
それでも、ご指導いただいた美術の先生や、先輩、同級生のおかげで、なんとか、試験に合格できるくらいの技術は、身につけることができました。
また、高校二年生という、比較的、早い時期から始めたのも、よかったと思います。
しかし、後になって、デッサンの意味やその必要性についてわかってくると、とても、もったいないことをしたな、と反省しました。
もっと早い時期から、デッサンの役割というか、良い点をしっかりと理解できていれば、積極的に、デッサンを学ぼうとしたはずです。
そうなると、イヤイヤ学ぶよりも、ワクワクしながら学ぶのですから、当然、上達もはやいでしょう。
その結果、もっとデッサンが上手くなったかもしれないし、効率よく学ぶことで、他のデザイン分野のテクニックも、より深く、身につけることができたかもしれません。
では、私が、後年になって気がついた、デッサンの意味というか、役割について、お話ししたいと思います。
もし、デッサン学習に嫌気がさしたり、そこに、意味を見いだせていない若い人がいたら、少しは参考になるかもしれません。
デッサンの役割というか、学ぶ意味は、いろいろあります。
その一つが、共通言語としての役割です。
わかりやすく言えば、デッサンは、コミュニケーションのための道具であり、自分の意思を伝えるために必要なのです。
例えば、今、私たちは、言葉を使い、その中の日本語を使うことで、自分の考えていることを、相手に伝えることができます。
しかし、これが、それぞれ違う言語、つまり、異なる言葉を使っていたら、どうでしょう。
例えば、自分はリンゴが欲しいと思って話しているのに、相手には伝わらず、もしかしたら、ミカンや桃を持ってくるかもしれません。
つまり、相手にもわかる言葉で話すことで、お互いの意思が伝わり、コミュニケーションが成立するのです。
これは、言葉の話でしたが、もしこれが、言語化不可能な内容だったらどうでしょうか。
また、今まで、見たこともない、まったく新しいイメージだったらどうでしょうか。
言語化不可能なのですから、言葉ではなく、そう、絵、すなわち、ビジュアルで伝える必要がありますよね。
その時に、相手にもわかるように伝えるために、最低限のデッサン力が必要なのです。
リンゴが欲しいのであれば、相手にもリンゴとわかる絵を描く必要があります。
自分が理想とする車を伝えるためには、それをわかりやすく描いてあげる必要があります。
自分が画期的なアイディアを思いついた時、それを多くの人に伝えるには、頭の中にあるだけでは、わかりません。
それを、具体的に、わかりやすく、描いて、表現してあげる必要があるのです。
その時、相手が理解し、伝わるためにこそ、デッサン力が必要なのです。
我々は、言葉や文字を身につけるために、幼い頃から、教育を受けてきました。
それは、共通言語である言葉を知らないと、社会の中で意思疎通ができないからです。
しかし、絵を描くこと、ビジュアルでのコミュニケーションについては、特に教えられることはありませんでした。
言葉で、ある程度、意思疎通はできますし、ビジュアルでのコミュニケーションを身につけるには、時間がかかるからです。
しかし、将来、デザインを仕事としていこうと考えている人にとっては、ビジュアルでのコミュニケーションに必要不可欠なデッサン力を身につける必要があります。
そうしないと、いくら、あなたの頭の中で、素晴らしいイメージがわいても、それを伝えることができません。
あなたの頭の中だけで、素敵なイメージは完結し、そこから、外に出ることはないのです。
イメージを、わかりやすく、他の、多くの人に伝えるためのデッサン。
それがデッサンを学ぶための意味であり、役割なのです。
言葉と同じように、デッサンも、一度身につければ、ずっと使っていくことができ、他の人とのコミュニケーションができるようになります。
そのために、半年や一年、がんばってみては、いかがでしょうか。
その時に、お役に立つヒントを、まとめてみました。
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