タイポグラフィに必要な地理と歴史の知識

編集デザインで、重要なものが、タイポグラフィです。

文章を構成する書体の選択によって、大きく誌面のデザインや、受ける印象というものが、変わってくるからです。


タイポグラフィを考える時、よく感覚で、選んでしまう人がいます。

「この書体は、かっこいいから」とか、「なんとなく目立ちそうだから」とかいう感じで、見た目だけで決めてしまう場合があります。


確かに、感覚で選ぶ、ということは、デザインにおいて、必要かもしれません。

しかし、タイポグラフィにおいては、知識も重要になってきます。


タイポグラフィにおける知識とは、その書体が生まれてきた地理的状況や歴史的な背景にも、注意をする、ということです。

タイポグラフィは、一人のデザイナーが、なんとなく、かっこいいから、という理由だけで作られたものではありません。

(もちろん、数多くのタイポグラフィの中には、そのような種類のものも、あるにはあるでしょうが……)

その書体が、そのような形やスタイルになったのには、理由があるのです。


こういったことは、『本づくり大全』にも、わかりやすく掲載されています。

⇒ デザインの現場編『本づくり大全』


例えば、欧文書体で「ボドニ」という書体があります。

これは、イタリアで生まれた書体です。しかも、北部ですね。

そのため、ボドニで組まれた文字や文章から、見る人は、イタリア北部と関係のあるものだ、として認識するわけです。

つまり、文字の内容と同時に、その文字のスタイルにおいて、そこで、一つの情報伝達がおこっているわけです。


このような地域的な関係を知らずに、ボドニという書体を使うと、見る人は混乱するし、文字の扱い方としては、乱暴だ、ということになってしまいます。


こういったことは、地域性だけでなく、その国の言語とも関係してきます。

例えば、先ほどのイタリアのボドニは、やはりイタリア語に対して使った場合に、もっとも美しく見えるように考えられています。

これを、例えば、ドイツ語にボドニを使用したら、イタリア語に比べて、やはり、美しくはないわけです。

また、フランスで作られた「ギャラモン」という書体は、やはり、フランス語に使用した方が、一番、美しく見えるのです。


これは、考えてみれば当然で、自分たちの使っている言語が、一番、美しく見えるように、その地域で、タイポグラフィが作られたのです。

だから、その地域の言葉を表現するには、その地域で作られたタイポグラフィを使用するのが、もっともいいのです。


したがって、このようなタイポグラフィの地域性や歴史的背景を学ぶ必要があります。

そうしないと、そのタイポグラフィの持っている美しさというものを、最大限に引き出すことができないわけです。


そして、もちろん、その美しさを活かすために、デザインの技術というものが必要になってくるのです。


タイポグラフィを学ぶ場合は、単なる見た目の感じや違い、というだけでなく、その書体が作られた地域や歴史にも関心を向ける必要があるのです。